『理事長のひとりごとvol.41』~「農業のお話し”田植え”」
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだまだ新型コロナウイルスに対する警戒が続いていますが、今年の田植えが終わりました。
今回はマニアックな農業のお話しですがお付き合い下さい。 イネ作りは圃場の土質や気候、地域性の違いからその方法が違いますのであくまで私の方法とご理解ください。
農業は一つの作業を達成する時期をゴールと考え、逆算してその準備作業の日程を決めます。例えば山田錦(酒米)を6月初旬に田植えをしようとすると、中苗の育苗期間を35日として4月末頃に種まき、その1週間前に種籾の消毒と芽出しのため水に漬けるところまで前にお話ししました。
この育苗もJAから苗を購入すれば手間はかからないのですが、自分で苗を作ると、種籾からゆっくり時間を掛けて足腰の強い苗に育てることができるからです。今年も根張りのしっかりした良い苗が出来ました。
田植えには補助してくれる人が必要なため、長男の休暇に合わせ6月2日・3日と決め準備を始めました。遡ってみますと、田植えの2日前に本代掻き(注1)、その5日前に荒代掻き(注2)、さらにその2日前に圃場に水を入れて畦ずき(注3)をしました。これは、私の圃場が東条川流域の扇状地で砂地のため水持ちが悪いので欠かせない工程になります。
また、田植えと同時に肥料を散布する施肥機があるのですが、私は昔ながらの動力散布機で肥料を全面散布しています。
これらの作業までに、畦の草刈りや「くれ返し」という耕耘を数回、その前に荒起こしを行います。
今はリタイアしているため時間的な余裕があるのですが、現役時代は朝晩に作業をしたり、休みの日を考えながらこれらの作業行っていました。
毎年行っていることなので難なくこなしていますが、頭の中にある経験と勘に頼っているところが多いので、昨年から「わが家の農業マニュアル」作りを進めています。
生産管理や品質管理などを改善していく方法にPDCAサイクルという手法があります。これは「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」を繰り返すことですが、農業に関してもこの手法を取り入れています。計画してやってみて、結果を分析して来年はこの様にしようと思うのですが、農業の場合は自然環境や天候の変化によって、昨年と同じようにしていても結果は違ってきます。そこが難しいのですが、一年たつと忘れてしまうので今更ながら先ほどのマニュアルを作ろうとしている訳です。
さて、先日の新聞に新型コロナウイルスの影響で日本酒が売れないため、酒蔵からの山田錦のキャンセルがJAの上部機関である全農兵庫で3割にも上っていると言う記事が載っていました。そして、来年は山田錦をかなり減産しなければならなくなりそうです。
とは言え、粛々と今年の良質な山田錦をつくるために農作業に励まなければいけないと思っているところです。
(注1)本代掻き ・・ 2回目の代掻きで、表面を整える程度に仕上げます。
(注2)荒代掻き ・・ 圃場の高低差をなくすように土を移動させながら、代掻きを行います。
(注3)畦ずき ・・ 圃場の水持ちを良くするために、畦の周辺2まわり程を前もって代掻きを行います。